ポケットビリヤードでは、全体の7割程度を手球の中心より下の撞点を使ってプレイしていると言われます。これは、ドローショットを使っているということではなく、手球のスピードや転がし具合をコントロールするために、下の方の撞点を選択しているということです。遠くの的球をポケットして、手球を少しだけ押したい場合、手球の下を撞いてスピードを殺し、的球に到達する瞬間にフォロー回転になるように調整するテクニックがあります。ドロー回転の手球もやがてはフォロー回転になります。この性質を利用したショットです。最初から手球の上をやんわり撞いて加減するとキュースピードもゆっくりになり、狙いが不安定になりますが、この方法であれば、キュースピードを極端に下げることなくショットができます。

このように、使い方によっては便利なドローショットですが、もう少し検証してみると意外な落とし穴が見えてきます。前述した例のショットは、手球を引くことを目的としたショットではなく、最終的に押すことを目的としたショットですが、

手球を引くことを目的としたドローショットは、そのコントロール性において、途端に確実性の低いものとなってしまいます。

たとえば、相手のファールによってフリーボールが与えられたとします。ネクストのコースとしては、フォローショットで手球を回す方法と、ドローショットでダイレクトに持って来る方法が選べる配置だった場合、どちらを選択するでしょうか。最短距離でポジショニングできるドローショットですか?いえ、上級者はだいたいフォローショットを選択するはずです。

ドローショットは、テーブルコンディションの影響を受けやすいだけでなく、そもそも回転の度合いをコントロールすることが難しいショットなのです。普段から撞き慣れたテーブルであれば多少は楽かもしれませんが、よその店ではそうもいきません。思ったよりも引けなかったり、逆に引きすぎたりといった経験はないでしょうか。それに対してフォローショットは、最初から素直に手球を転がすというシンプルなショットであり、力の加減をイメージすることが容易であると言えます。さらに、振りのある配置の的球に対してドローショットを使った場合、的球に当たった後に手球が出て行くコースをコントロールすることは意外に難しいものです。これについてもフォローショットは、手球が出て行く角度をイメージすることが容易です。

上級者はこのあたりを経験から熟知しています。安易にドローショットを選択するのではなく、確実性の高いフォローショットを使いこなす方が、リスクを抑えることができることを知っているのです。もしどうしてもドローショットを使わなければならない場面であれば、振りの角度にもよりますが、力加減ではなく撞点の上下で調整すると良いでしょう。これならキュースピードを変えずに、手球が引く距離をコントロールできるようになります。中心より若干下の撞点でほんの少し引く、さらに下の撞点でもう少し引く、またさらに下の撞点でもっと引く、というように練習をしておけば、実戦で役に立てることができます。しかし、二者択一の場面であれば、確実性の高いのはフォローショットの方であるという事実は変わりません。