Month1月 2015

自分のショットで手球のコースを正確に予測できますか?

日頃、ナインボールなどのゲームをしている最中に、この的球をポケットしたら手球がスクラッチしそうだな、と感じたことはありませんか。そして実際に撞いてみると案の定スクラッチしたという経験があるのではないでしょうか。これは確かにミスショットですが、撞く前に感じた予感は本物です。そんな予感が働くということは、手球のコースを予測する能力が備わっていることになります。決して悲観することではありません。次の機会には予感を信じて、スクラッチを回避する方法を考えればいいのです。こんな予感は、数多く球を撞いているうちに自然と身に付いたものです。狙いの角度(振り)と手球の弾かれていくコースを予測する第一歩と言えます。

的球に当たってからの手球がたどるコースを把握することは、手球のコントロールの第一歩です。

狙い、すなわち的球に当たる手球の厚みと、撞点の上下、力加減という情報を基に手球は走ります。手球のコースを予測するには経験を積むしかありません。その経験を基に予測した手球の走るコースを、実際のプレイに一致させることでコントロールが可能になります。そのための練習方法を紹介しますので、積極的に普段の練習に取り入れてください。

まずはいわゆるセンターショットの応用です。センタースポットに的球を置き、手球をフットスポットに置きます。これを向こう正面の左右のコーナーポケットどちらかにシュートするわけですが、重要なのは手球のコースです。撞点を上から下まで微妙に変えながら、左右の長クッションのどのポイントに手球が当たるかを覚えましょう。向かって左のポケットにシュートするなら、右側の長クッションに手球が当たります。まずは上の撞点で、奥から一つ目のポイントに向かうようコントロールしてみましょう。次にやや撞点を下げて、奥から二つ目のポイント、次に三つ目というように練習をしてください。厚みと撞点と力加減による手球の動きの違いを記憶しましょう。

次に、的球をコーナーポケットから2ポイント目の長クッション際に置きます。手球を3ポイント目付近の中央に置き、的球をコーナーポケットにシュートします。その際に撞点を上下使い分けて、手球がクッションからどのように跳ね返ってくるかを覚え込みましょう。これに左右のひねりを加えながら反復練習をし、自分の思ったところに手球をコントロールできるようにするのです。この練習には無限のバリエーションが設定できます。長クッションから長クッション、短クッションから短クッションと、様々な配置から試してみると良いでしょう。振り、撞点、力加減、ひねりによって、的球に当たった手球が直接走って行く方向と、クッションに跳ね返ってから進んでいく方向を把握することがネクストコントロールの基本となります。様々な配置で、振り、撞点、力加減、ひねりの度合いなどを変えながら何通りも試してみることです。

ゲームにおいて、目の前の的球を自分がどのように撞けばどうなるかということがわかっていれば、ネクストコントロールを考える上で格段のヒントになります。一人での練習を有意義なものにするためにも、ぜひとも取り入れてください。

テーブルの外にまで視野を広げて全体を捉えることが重要です!

発展途上のプレイヤーによくある光景として、目の前のボールの配置に固執するあまり、わざわざ難しいコントロールを選択してしまうという場面があります。ひとつのコーナーポケットの周辺に複数の的球が固まっていた場合など、その付近にしか目が向かないのです。しかも、最短コースでネクストポジションを取りたいばかりに、上級者でも難しいコントロールをわずかな情報量だけでやろうとします。これではミスするのも当然です。

一歩下がってテーブル全体を見渡しましょう。邪魔なほかのボールを気にすることなくポジショニングできるコースが見つかるはずです。

手球を多少大きく動かすことになっても、無茶なコントロールに挑戦するよりはずっと確実です。

毎日ビリヤードをやっていると、初めて見るボールの配置というものがなくなっていきます。それゆえに自ら選択肢を少なくしている傾向があります。この配置ならこうだと決めつけているのです。どんなに見慣れた配置でも、まったく同じということは決してありません。また、こうしなければいけないという決まりもないわけですから、決めつけずに全体を見渡して考えるべきです。直接狙えない的球を、空クッションを利用して当てに行く場合、テーブル上ではなく周囲の壁などに目標を設定するプレイヤーさえ存在します。目の前にばかり夢中になるとプレイの幅も広がりません。テーブル全体を使って手球を大きく動かすダイナミックなプレイができれば、これは気持ちのいいものです。

これまで述べてきたような現象は、他人のプレイを観察していない人が陥りやすいものです。中には見ているようで見ていない、見ているけれど考えていないといった学習意欲の欠けた人もいます。残念ながらそのようなスタンスでは上達できません。相撞きの際も、相手のプレイを少し離れたところから眺めることは大切です。自身がプレイするときについつい視野の狭くなる人でも、テーブル全体を俯瞰して見ることができます。テーブルの隅々まで目を配れば、意外なところに道が開けているのを発見できるものです。他人のプレイを自分がプレイしているつもりで観察する癖をつけるようにしましょう。

ポケットビリヤードの試合では、ナインボールやテンボールが主流のようですが、ほかのゲームを積極的に取り入れて練習することでバリエーション豊富なイメージを作り出す能力が身に付きます。ローテーションをプレイすることからは、ナインボールやテンボールより緻密な手球のコントロールを学習することができます。エイトボールからは相手との微妙な駆け引きを学べます。ストレートプールとも呼ばれる14-1ラックゲームでは、駆け引きだけでなく、ボールそのものの性質を学習しながら持久力までも鍛えることが可能です。どのゲームも特徴的で奥が深いものばかりです。時にはこれらをプレイすることでさらに視野を広げ、ビリヤードの魅力をあらためて実感してほしいと思います。

日頃、こんなことができないかな、あんなことができたらいいな、と考えているようなことは、たいてい先人が知恵を絞って体系化しています。中には目から鱗の裏技などもあります。重要なのは、殻にこもらず視野を広げ、積極的に上級者とのコミュニケーションをとることなのです。

フォローショットの確実性とドローショットの不確実性について

ポケットビリヤードでは、全体の7割程度を手球の中心より下の撞点を使ってプレイしていると言われます。これは、ドローショットを使っているということではなく、手球のスピードや転がし具合をコントロールするために、下の方の撞点を選択しているということです。遠くの的球をポケットして、手球を少しだけ押したい場合、手球の下を撞いてスピードを殺し、的球に到達する瞬間にフォロー回転になるように調整するテクニックがあります。ドロー回転の手球もやがてはフォロー回転になります。この性質を利用したショットです。最初から手球の上をやんわり撞いて加減するとキュースピードもゆっくりになり、狙いが不安定になりますが、この方法であれば、キュースピードを極端に下げることなくショットができます。

このように、使い方によっては便利なドローショットですが、もう少し検証してみると意外な落とし穴が見えてきます。前述した例のショットは、手球を引くことを目的としたショットではなく、最終的に押すことを目的としたショットですが、

手球を引くことを目的としたドローショットは、そのコントロール性において、途端に確実性の低いものとなってしまいます。

たとえば、相手のファールによってフリーボールが与えられたとします。ネクストのコースとしては、フォローショットで手球を回す方法と、ドローショットでダイレクトに持って来る方法が選べる配置だった場合、どちらを選択するでしょうか。最短距離でポジショニングできるドローショットですか?いえ、上級者はだいたいフォローショットを選択するはずです。

ドローショットは、テーブルコンディションの影響を受けやすいだけでなく、そもそも回転の度合いをコントロールすることが難しいショットなのです。普段から撞き慣れたテーブルであれば多少は楽かもしれませんが、よその店ではそうもいきません。思ったよりも引けなかったり、逆に引きすぎたりといった経験はないでしょうか。それに対してフォローショットは、最初から素直に手球を転がすというシンプルなショットであり、力の加減をイメージすることが容易であると言えます。さらに、振りのある配置の的球に対してドローショットを使った場合、的球に当たった後に手球が出て行くコースをコントロールすることは意外に難しいものです。これについてもフォローショットは、手球が出て行く角度をイメージすることが容易です。

上級者はこのあたりを経験から熟知しています。安易にドローショットを選択するのではなく、確実性の高いフォローショットを使いこなす方が、リスクを抑えることができることを知っているのです。もしどうしてもドローショットを使わなければならない場面であれば、振りの角度にもよりますが、力加減ではなく撞点の上下で調整すると良いでしょう。これならキュースピードを変えずに、手球が引く距離をコントロールできるようになります。中心より若干下の撞点でほんの少し引く、さらに下の撞点でもう少し引く、またさらに下の撞点でもっと引く、というように練習をしておけば、実戦で役に立てることができます。しかし、二者択一の場面であれば、確実性の高いのはフォローショットの方であるという事実は変わりません。

狙いの厚みを的確に捉える絶対的な方法などありません!

ポケットビリヤードにおいては、的球をシュートできることが勝つための大前提となります。どんなに器用に手球をコントロールできても、的球がポケットに入らなければ相手に順番を譲ることになります。逆に、手球を器用にコントロールできなくても、シュート力だけは異常に高いというプレイヤーはなかなか負けません。いわゆる下手なのに強いプレイヤーですね。器用で上手な人から見れば腹立たしくもありますが、これも勝負の世界です。悔しければもっと上のシュート力を身に付ければいいだけの話です。では、シュートを確実にするための方法などあるのでしょうか。

残念ながら、狙いの厚みを確実に捉える方法などはありません。個々に創意工夫することと感覚を養うということ以外にないのです。

では、どうやって感覚を養っていけばいいのか、そのヒントを考えてみましょう。

ビリヤードのテーブルは大きさも形も決まっています。6つのポケットの位置も一定です。ボールの大きさも同様です。テーブルの4辺にはクッションレールが土手のように囲んでいて、コーナーポケットへの位置情報をプレイヤーの視野に与えてくれます。日々の練習を重ねるうちに、ポケットがある方向を確認しなくても、的球が置かれた位置を見るだけで、狙うべき厚みがわかるようになります。それくらい人間の空間把握能力は優れているということです。ここに、的球をポケットに入れるための情報をできるだけ多く加えることが、シュート力の精度を上げることにつながります。この情報の集め方を具体的に考えていきましょう。

イメージボールという言葉を耳にしたことがあると思います。狙い、すなわち厚みを予測する際には、とかくこの一言で片付けられがちです。これは、入れるべきポケットと的球をつなげた一直線上に、的球と接するように手球の姿をイメージするということですが、実際には存在しない姿をイメージするのは容易なことではありません。ではどうすればいいか。まず、手球を当てるべき接点の位置を的球の表面上に確認します。さらに、そのときの手球の中心点をテーブル上にイメージします。つまり、ポケットと的球を直線で結び、的球からボール半個分の位置に頭のなかで目印をつけるのです。その目印を狙いとして構えます。そして、狙いの厚みが違うような気がする、といった違和感があったら、もう一度測り直します。違和感がなくなったらシュートです。これを繰り返すうちに、無造作に構えても比較的正しい厚みを捉えることができるようになります。

また、極端に低いフォームでは、構えた際の視界には平面的な映像しか見ることができません。懐に空間を作ってやや高いフォームにすると、的球とポケットまでの角度や距離を俯瞰して見ることができ、立体的なイメージをつかみやすくなります。どうしても低いフォームの方が得意であるなら、構えに入る際に、一旦は高い位置から状況を確認してから姿勢を下げるようにすると良いでしょう。とにかく、何度も何度もシュート練習を繰り返して、ボールという球体に対する感覚を磨いていくことです。経験だけが情報を蓄積する唯一の手段なのです。

手球に与える情報量!それこそがビリヤードの要です!

白い手球がテーブル上を縦横無尽に走り回り、テンポ良くひとつずつ的球をポケットに沈めていき、気がつけばテーブルの上には手球だけが佇んでいる。こんな光景を思うがままに自分で作り出したいと考えるのが、ビリヤードの魅力にはまった人たち共通の願望だと思います。しかし、その手球を走らせるのはほかでもない自分であり、動きをコントロールするには経験だけが物を言います。はたして、手球をコントロールするのに必要なこととは何でしょうか。それはただひとつ。

キュー先から手球に与える正確かつ豊富な情報、これこそがビリヤードというゲームを操る要となる部分なのです。

「球は正直だ」という言葉を口にする人が多いですが、まったくそのとおりです。テーブルのコンディションなどを除けば、手球はキュー先から与えられた情報に従ってしか動きません。同じテーブルでゲームをしていれば条件は相手も同じです。ミスをすれば、悪いのはすべて自分です。その点を考えると、ビリヤードは対戦型の競技でありながら、テニスや卓球などとは違い、むしろ体操や砲丸投げといった個人競技の側面を多く含んでいる数少ない競技であると言えます。しかも、ボーリングなどとも違い、必ず自分の順番が回ってくるとも限りません。ノーミスでポケットし続ければ、相手の出番を一度も許さないまま勝利することだってできるのです。このあたりにビリヤードという競技の言葉にできない不思議な魅力が隠されているようですね。

さて、キューという唯一の道具から、手球にはどのような情報を伝えることができるのでしょうか。それは、方向、回転、強弱、そして摩擦力です。方向という情報で狙いに向かわせ、回転と強弱の組み合わせでコントロールし、時には摩擦力を加えることで強制的に変化させるのです。伝えられた情報に忠実に手球は動きます。すなわち、与えられた情報の正確さが重要なわけです。この情報をいかに正確に伝えられるようになるか、これが上達というものなのです。

狙うべき方向、すなわち「厚み」の正確性は反復練習で身に付きます。回転、すなわち「ひねり」については、上下左右を自由に使いこなせるようにしたいところです。こればかりはキューの性質によっても個人の感覚によっても異なりますから、一人の練習でじっくり取り組む部分です。強弱については奥が深いものです。ただ強く撞いたり、弱く撞いたりするものではありません。いたずらにストロークの強弱だけで調整しようとするのは、狙いのブレにつながります。キュー出しのスピードを変えなくても、上下の撞点を操ることで、手球が的球に達したときの強弱をある程度は調整できます。

緻密で正確な情報を発信するには、自分のアーカイブに豊富な情報を蓄積する以外に方法はありません。そのためには経験を積み重ね、知識を貪欲に吸収することです。上級者のテクニックを盗むことです。多くのプレイヤーが難しいと言うショットをあえて練習し、得意なショットにしてしまうことです。苦手だと思ったショットも同様です。手球が思ったとおりに動かせる快感は、ただシュートするだけに比べれば何百倍にも匹敵するものです。思いついたことはすべて試し、自分が持つ情報量を増やしていきましょう。

一人で練習するより誰かと相撞きをすることが重要な理由とは?

ビリヤードが競技である以上、最終的な目的は誰かと手合わせをして勝つことです。勝つために上達することを目指すわけです。ですから、

試合同様のゲームをするために誰かと相撞きをすることは、上達に欠かせない最も重要な練習方法と言えます。

もちろん、時には一人でじっくり練習したいと思うこともあるでしょう。それはそれで、無駄のない効果的な内容であれば意義のあるものにできます。しかし、試合独特の緊張感や、駆け引き、他人の視線など、ストレスを感じながらのプレイは、メンタル面を鍛える意味でも優先したいところです。

誰かとゲームをしている最中に、相手が撞いているとき携帯電話をいじってばかりいるような人を見かけることがあります。相手のプレイをまったく見ていないのです。よほど自分の腕に自信があるのだろうと観察していると、たいていミスばかりで、席に戻ってまた携帯電話に手を伸ばします。これはもう上達する気がないとしか思えません。そもそもマナーがなっていません。相手に対してこれほど失礼なことはないでしょう。上達したいのなら、必ず相手のプレイを観察するべきです。相手が格下の場合も同様です。自分がプレイしているつもりで、組立てや手球を走らせるべきコースと撞点などを考えながら、相手の実際のプレイと比較するのです。いわゆるイメージトレーニングです。そして、相手が自分の考えと異なる取り方をしたなら、その理由を考えます。それが自分にとっての参考になる場合もあるでしょうし、明らかに間違いであると思えば、その相手へのアドバイスもできることでしょう。また逆に、疑問に思ったことは質問し、教えてもらうこともできるはずです。

相撞きの後に、参考にすべきこと、上手くできなかったことなどを復習する時間を設ければ、なお有効です。覚えたことは時間を空けずに、イメージが新鮮なうちに確認しておきたいものですし、失敗したこともその日のうちに修正しておくのが理想的です。新たに得た知識や経験を積み重ねることでプレイの幅が広がります。レベルの異なる人と相撞きをすることは大いに勉強になるものです。相手が格上であれば新しいことを覚えるチャンスですし、相手が格下であれば蓄えてきた知識をアウトプットすることで確実なものにできます。いずれも上達するためにたいへん効果的な練習となるのです。

一人でただただ練習していても、目の前には限られた可能性しか転がっていません。しかし、誰かとゲームをすると新しい発見の連続です。一つの球を撞くにも方法は何通りもあり、選択肢が多ければ多いほどプレイの内容を濃いものにできます。多くの選択肢から確率の高いものを選び、より緻密なゲーム展開が可能になります。考える楽しみが広がります。自分の引き出しは多いに越したことはありません。引き出しを増やすための手段として、誰かと相撞きをすることは最も効果的な練習です。相手の技術やアイデアを盗んで自分のものにしてしまいましょう。プレイの幅が広がれば、ビリヤードはもっともっと面白くなり、奥の深さを実感することができるはずです。

警鐘!あなたの練習方法には無駄が多すぎませんか?

ビリヤードの魅力に惹かれて上達したいと思うようになると、誰でも練習意欲が湧くものです。練習方法は人それぞれで、一人で黙々とひたすら球を撞き続ける人もいれば、誰かに積極的に声をかけて相撞きを申し入れることを常とする人もいます。さてそれでは、どちらの方が、より有効的な練習方法と言えるのでしょうか。答えは簡単です。どちらも有効的な練習方法であると言えます。ここで問題となるのは、一人での練習時間と、誰かと相撞きする時間とのバランス、そしてその内容なのです。

一人の練習だろうと、誰かとの相撞きだろうと、それを練習であると考えると、上達のために意味のある内容にしなければせっかくの時間が無駄になります。

ビリヤードは競技です。誰かと競い合うものです。上達したいと考えるのも、相手に勝てる技量を身に付けたいという思いからのはずです。そうすると、やはり優先すべきは誰かとの相撞きであると言えそうです。ナインボールなりテンボールなり、誰かとゲームをすることで、自分の現在の力量を試すことができます。また、ゲームに勝つために自分に必要なスキル、足りないスキルは何なのかを明確にできます。相手の優れた点を学ぶこともできます。知りたいと思ったことは素直に質問して教えてもらえばいいのです。そして、それらの情報を基に、一人での練習に取り入れるようにすることが基本的な流れになります。ですから、相手がそこにいるのなら、積極的に相撞きをするようにしましょう。相手のレベルは関係ありません。上級者へ声をかけるのは抵抗があるかもしれませんが、そこは勇気を出してチャレンジしましょう。そして、盗めるものは盗むべきです。

一人の練習で、まっすぐなセンターショットをひたすら続けている人をよく見かけます。これを推奨する人も多いようですが、はっきり言ってあまり意味はありません。練習前の肩慣らしや状態のチェックのために数回程度というならわかりますが、何時間もひたすら続けるのは時間の無駄です。実戦で目の前にする球の配置は、ほとんどまっすぐではありませんから。同じセンターショットでも、振り(角度)や撞点を色々と変えて練習するべきです。ボールをテーブル上にばら撒いて適当に取り切るだけでも、まっすぐなセンターショットを続けるよりは有効です。まっすぐな配置の的球をどれだけ熱心に見つめたところで、振りのある配置での狙いとなる厚みを覚えることはできません。

特別に練習したいメニューがないのであれば、一人の時はボーラードがおすすめです。上達の過程を数字で知ることができます。また、ナインボールやテンボール、ローテーションなどのゲームを一人で行うことも効果的です。続けるうちに、初めて見るボールの配置というものがなくなります。苦手とするショットも自覚できるようになります。おのずと重点的に練習すべきメニューがわかってくるわけです。どんなに難しい配置の球でも、一度でもシュートに成功できれば経験値がアップします。経験値を上げれば実力も上がっていきます。誰かとの相撞きで課題を見つけ、練習で克服し、また新たな課題を見つけて練習する。この繰り返しが無駄のない練習であることを覚えておきましょう。

気にしすぎるのは危険?キューはまっすぐ出ないものです

ストロークに重要なのはキューをまっすぐに出すことだと思っている人が多いようです。しかしこれは誤解、いや間違いです。

キューがまっすぐ出ないことは、的球をポケットできない理由ではありません。

そもそも、人間の身体の構造から言っても、キューをまっすぐに出すことはほぼ不可能なのです。キューをまっすぐに出すことに固執して、あれだこれだとフォームの改造を試みる人もいますが、たいていは見た目が不格好で奇妙なフォームが出来上がってしまいます。確かにキューをまっすぐに出すことができれば、あとは狙いの精度を高めるだけでシュート力が増すかもしれません。しかし、できるはずのないことを追い求めた結果、体勢に無理のある奇妙なフォームになってしまっては本末転倒です。

フィリピンのプレイヤーに多く見られるのが、キューを突き出す瞬間に放り投げるようにするストロークです。これもキューをまっすぐに出すための工夫なのでしょうが、真似することはおすすめしません。彼らの多くは幼少の頃からプレイをしており、小さな身体を補うために独特のテクニックを自然と身に付けています。つまり、必要に応じて体得したものなのです。これを真似することに特別な意味は見出せません。余計な力を抜いて、スムーズなストロークさえできれば、キューをまっすぐに出すことを必要以上に気にすることはないのです。

プロを含め、上級者が球を撞く様子を真後ろから見てください。確実にまっすぐキューを出せる人はほぼ皆無です。ではなぜ、無理なく確実に的球をポケットへ運べるのでしょうか。それは、撞点すなわち、手球の撞くべき点を的確に捉えることに集中しているからです。そのことにキューをまっすぐに出すことは前提となっていません。ただスムーズなストロークと、撞点を捉える集中力によって、狙いに向かって正確に手球を放つことができるのです。これは、日々の練習の積み重ねでシュートの感覚を養えば、誰にでもできることです。

キューがまっすぐ出ないことなど気にせず、自然なフォームでスムーズなストロークができるよう練習し、手球の撞点を的確に捉えるよう意識しましょう。そして、とにかく数多く球を撞くことです。人間の感覚というものは、想像以上に優れています。何度も何度も経験して身体に学習させることで、シュート力は確実に向上します。感覚を磨くのです。「勘」を身に付けると言ってもいいかもしれません。一度身に付いたシュートの勘は、日々ビリヤードに接してさえいれば、簡単に忘れることはありません。辛抱強く、繰り返し繰り返し球を撞き続けることが上達に欠かせない最も重要な要素です。

シュート力が身に付けば、キューがまっすぐに出ているかどうかなど気にする必要がなくなります。そもそも、無理のない自然なフォームであれば、ビリヤードに必要なストロークは十分に可能なのですから、キューがまっすぐに出ているかどうかではなく、いかに手球の撞点を捉え、いかに狙いの精度を高めるかということにこそ注意を向けるべきだと言えます。

ビリヤードの練習と筋力トレーニングの共通点とは?

筋力トレーニングを行った経験はあるでしょうか。筋力を鍛える、筋肉をつけるという作業には、日々の安定的な継続が重要です。このことは、この世の競技と言われる全ての分野に共通して言えることです。もちろん、ビリヤードも例外ではありません。筋力は日々の鍛錬を怠れば増強できません。せっかく鍛えられた筋肉も、継続してトレーニングしなければ徐々に衰えます。

ビリヤードにおいても、日々の練習を安定的に継続することが上達には欠かせない要素です。

仕事の影響などで、練習をしたくてもできない日が続いてしまった経験を持つ人も多いでしょう。一週間ぶりに撞いた球の感触はどうでしょうか。あまりの違和感に驚く人もいることでしょう。人間は一度体得したことは忘れにくいものですが、そうなるまでは長い時間がかかります。日々の積み重ねが身体に記憶され、長い時間をかけて定着するのです。ですから、練習は毎日するに越したことはありません。わずかな時間、例えば30分間だけでもいいので毎日欠かさずに続けることが理想的です。一日置き、二日置きに長時間練習するより、短時間でも毎日練習する方が効率は良いものなのです。

日常の動作の中に、ビリヤードに使われる動作に似たものはほとんどありません。それだけ特殊な動作なのです。この動作はビリヤードを実際に行う以外に身に付きません。しかも、同じ動作を繰り返す反復練習だけが、その動作を身体に覚えさせることを可能にします。自宅にビリヤードテーブルを所有しているなら最高の環境ですが、そんな人はなかなかいないでしょう。したがって、どうしてもビリヤード場に通うことになります。生活圏内にビリヤード場があれば問題無いと思いますが、そうではないという人にとって毎日の練習はなかなか困難なことです。そんな人は、自宅で素振りだけでも行いましょう。ビリヤードテーブルと同じくらいの高さの机などを使って、イメージをしながらキューを振る。これだけでも多少の効果は期待できます。

実際にビリヤード場に足を運んで練習することには様々なメリットがあります。それは、その独特な環境と雰囲気がもたらすものです。そこから得る刺激は、自宅で味わうことができません。ビリヤード場の空気に触れるだけでも一種の練習になるとさえ思われます。また、常連客になれば仲間もできて、上級者からのアドバイスも受けられることでしょう。時にはプロが訪れることもあるかもしれません。試合とは違い、ストレスから開放されたプロのプレイは大いに刺激になるはずです。そして何より、誰かと手合わせをすることこそ最高の練習と言えます。お互いの手の内を見せ合い、分からないことは積極的に聞くことで、自分にないものを補うことができます。初めて知ったことを実践することで技量に磨きをかけることができます。一人で殻にこもっていては進歩することは困難です。そのためにも、できるだけ毎日ビリヤード場に通って練習することが理想的なのです。

「形から入る」は正解?フォームは見た目が重要です!

ビリヤードの上達を目指す人なら、自分のフォームについて悩むのが日常になるものです。足の位置や角度を変えてみたり、レストを置く位置を変えてみたり、頭を低くしたり高くしたり、利き腕の肩を上げたり下げたり、色々と試行錯誤を繰り返すことでしょう。結果、これが最もシュート力が高まると思い込み、傍から見ると実に不格好なフォームを選択してしまう、そんなことも多いのではないでしょうか。そのようなフォームは必ず身体のどこかしらに無理な姿勢を強いているものです。決して良いとは言えません。

では、

理想的なフォームとはどういう姿勢でしょうか。それを一言で表現するなら「自然体」であると言えます。

そしてこの自然体で構えた姿は見た目にも格好が良いものです。ビリヤードが好きなら、多くのプロや上級者のプレイを見たことがあるでしょう。それらを今一度よく観察してみましょう。その中から、ヘンテコなフォームをしている選手を見つけるほうが難しいことに気付くはずです。体型や身長による多少の違いや、頭の位置が高いか低いかの差くらいはあるでしょうが、無理な姿勢でプレイする人はなかなかいないと思います。

ビリヤード以外の競技でもそうですが、俗にいう「形から入る」というのは、あながち間違いではないのです。正しいフォームを身につけることは全ての基本であると言えます。ここから間違ってしまえば、上達の伸びしろを失うことにもなります。決しておろそかにしてはいけません。上達したければ、ここからリスタートを切りましょう。

まずは、いつもどおりに構えた自分の姿を鏡に映して見てみましょう。友人に四方八方から写真や動画を撮ってもらうといいかもしれません。その姿に違和感があれば、不自然な点がどこなのか細かくチェックします。頭の位置、顔や胴体の向き、利き腕の肘が極端に外側へ張り出していたり、逆に内側に入りすぎていたり、肘関節が開きすぎていたり閉じすぎていたり、レストと手球の距離など、客観的に見ることで初めて気付かされることが多いはずです。とにかく格好の良い無理のない自然体を基本フォームとして身に付けることです。初めのうちはかえって違和感を伴いますし、ストロークも安定せず、シュート力も落ちることでしょう。しかし、ここは我慢です。すぐに慣れて楽にプレイができるようになります。その先に順調な上達が約束されると思えば何でもないはずです。

さて、格好の良いフォームと言っても、理想とするフォームというのは人それぞれです。英国式スヌーカーのようにシュート力に重点を置いた低いフォームもあれば、手球のコントロールのため懐を広くし、ストロークに重点を置いた高めのフォームもあります。自分が目指すプレイスタイルにもよりますが、スヌーカーに比べてずっと小さなテーブルを使うビリヤードにおいては、シュート力にはさほど差が生じません。手球のコントロールに重点を置いた方が懸命とも言えます。だとすれば、懐を窮屈にしてしまう低いフォームより、ストロークにレパートリーを取り入れやすい高めのフォームの方が理想的かも知れません。少し高い位置から球の配置やコースを俯瞰して見ることで、手球の動きを把握することも容易になります。もっとも、最終的に判断するのは自分自身です。まずは無理のない自然体であると思えるフォームを追究しましょう。フォームはビリヤードを続けるうちに自分なりの形に変化し、様々な障害を生じることも多くあります。しかし最初に理想形を身に付けておくことで、チェックや修正が容易になるものです。

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