ゲームを進める上で大切なこととして、的球をどのように取り切るか事前に組立てを考えるべきだと言われます。ゲームの進行と共に状況は変わるのだから無意味だと思われるかもしれません。たしかに、

事前に全体の組立てを考えることの必要性はありません。しかし、勝負に勝つためと、上達するためには極めて重要なことだと言えます。

では、このことが具体的に何を意味し、どうしろと言っているのか、ちょっと検証してみましょう。ここではナインボールを例にして説明していきます。

ブレイクショットをしてテーブル上に散らばった的球があります。自分のブレイクショット後でも、相手のブレイクショット後でもかまいません。ご存知のように一番若い番号のボールから狙っていくわけですが、まずはテーブル上の各的球の配置を見渡してみます。そして、取り出しとなる最初のボールと手球の位置関係を確認し、次の的球を狙えるポジションと、そこへ手球を運ぶコースを考えます。そのポジションは、その次に狙う的球をポケットしつつさらに次の的球を狙えるポジションに運べる位置でなければなりません。このように三手先まで考えることが、ポケットビリヤードにとって最低限必要な組立てなのです。この組立てを、最初から全ての的球に対して考えてからプレイに入ろうというわけです。気が遠くなりそうですね。そもそも、イメージどおりにすべてが運べたら苦労はありません。ところが、実際にこのようなプレイスタイルでマシンのようにきっちりと取り切ってみせるプレイヤーはたくさん存在します。

このことは必須の項目ではありません。あくまで気持ちの問題です。個人の性格にもよるでしょう。最低三手先まで組立ててプレイし、失敗したらまた組立てを考えて修正する。この繰り返しでも十分にゲーム運びはできます。ただ、最初にテーブル全体を見渡しておくことは重要なことです。すべての的球がまんべんなく散っていればいいですが、何かしらトラブルを伴った配置があるはずです。ただ単にネクストゾーンが狭くてコントロールが難しい、的球がくっついていてそのままではポケットできない、サイドポケットに微妙に被った的球があるなど、早い段階から把握しておくべき状況がきっとあります。そこで、このトラブルの打開策を含めた組立てを最初に考えて、じっくり実行していくのです。これですべての的球を取りきれる可能性は格段に上がります。

人間の感覚がどんなに優れていようと、毎回毎回思い通りにプレイを進めることは不可能です。どうしても細かい修正が必要になるものです。しかし、事前の組立てが重要だという理由はおわかりいただけたはずです。トラブル回避だけでなく、視野を広げてイメージを作る訓練にもなり、そのイメージどおりにプレイすることを目指せば、シュートやコントロールの精度を上げることができることでしょう。事前にすべての組立てを考えることの必要性は問いませんが、プレイに対するマインドとして頭に入れておくことは重要なことだと言えるでしょう。