ビリヤードが競技である以上、最終的な目的は誰かと手合わせをして勝つことです。勝つために上達することを目指すわけです。ですから、

試合同様のゲームをするために誰かと相撞きをすることは、上達に欠かせない最も重要な練習方法と言えます。

もちろん、時には一人でじっくり練習したいと思うこともあるでしょう。それはそれで、無駄のない効果的な内容であれば意義のあるものにできます。しかし、試合独特の緊張感や、駆け引き、他人の視線など、ストレスを感じながらのプレイは、メンタル面を鍛える意味でも優先したいところです。

誰かとゲームをしている最中に、相手が撞いているとき携帯電話をいじってばかりいるような人を見かけることがあります。相手のプレイをまったく見ていないのです。よほど自分の腕に自信があるのだろうと観察していると、たいていミスばかりで、席に戻ってまた携帯電話に手を伸ばします。これはもう上達する気がないとしか思えません。そもそもマナーがなっていません。相手に対してこれほど失礼なことはないでしょう。上達したいのなら、必ず相手のプレイを観察するべきです。相手が格下の場合も同様です。自分がプレイしているつもりで、組立てや手球を走らせるべきコースと撞点などを考えながら、相手の実際のプレイと比較するのです。いわゆるイメージトレーニングです。そして、相手が自分の考えと異なる取り方をしたなら、その理由を考えます。それが自分にとっての参考になる場合もあるでしょうし、明らかに間違いであると思えば、その相手へのアドバイスもできることでしょう。また逆に、疑問に思ったことは質問し、教えてもらうこともできるはずです。

相撞きの後に、参考にすべきこと、上手くできなかったことなどを復習する時間を設ければ、なお有効です。覚えたことは時間を空けずに、イメージが新鮮なうちに確認しておきたいものですし、失敗したこともその日のうちに修正しておくのが理想的です。新たに得た知識や経験を積み重ねることでプレイの幅が広がります。レベルの異なる人と相撞きをすることは大いに勉強になるものです。相手が格上であれば新しいことを覚えるチャンスですし、相手が格下であれば蓄えてきた知識をアウトプットすることで確実なものにできます。いずれも上達するためにたいへん効果的な練習となるのです。

一人でただただ練習していても、目の前には限られた可能性しか転がっていません。しかし、誰かとゲームをすると新しい発見の連続です。一つの球を撞くにも方法は何通りもあり、選択肢が多ければ多いほどプレイの内容を濃いものにできます。多くの選択肢から確率の高いものを選び、より緻密なゲーム展開が可能になります。考える楽しみが広がります。自分の引き出しは多いに越したことはありません。引き出しを増やすための手段として、誰かと相撞きをすることは最も効果的な練習です。相手の技術やアイデアを盗んで自分のものにしてしまいましょう。プレイの幅が広がれば、ビリヤードはもっともっと面白くなり、奥の深さを実感することができるはずです。