発展途上のプレイヤーによくある光景として、目の前のボールの配置に固執するあまり、わざわざ難しいコントロールを選択してしまうという場面があります。ひとつのコーナーポケットの周辺に複数の的球が固まっていた場合など、その付近にしか目が向かないのです。しかも、最短コースでネクストポジションを取りたいばかりに、上級者でも難しいコントロールをわずかな情報量だけでやろうとします。これではミスするのも当然です。

一歩下がってテーブル全体を見渡しましょう。邪魔なほかのボールを気にすることなくポジショニングできるコースが見つかるはずです。

手球を多少大きく動かすことになっても、無茶なコントロールに挑戦するよりはずっと確実です。

毎日ビリヤードをやっていると、初めて見るボールの配置というものがなくなっていきます。それゆえに自ら選択肢を少なくしている傾向があります。この配置ならこうだと決めつけているのです。どんなに見慣れた配置でも、まったく同じということは決してありません。また、こうしなければいけないという決まりもないわけですから、決めつけずに全体を見渡して考えるべきです。直接狙えない的球を、空クッションを利用して当てに行く場合、テーブル上ではなく周囲の壁などに目標を設定するプレイヤーさえ存在します。目の前にばかり夢中になるとプレイの幅も広がりません。テーブル全体を使って手球を大きく動かすダイナミックなプレイができれば、これは気持ちのいいものです。

これまで述べてきたような現象は、他人のプレイを観察していない人が陥りやすいものです。中には見ているようで見ていない、見ているけれど考えていないといった学習意欲の欠けた人もいます。残念ながらそのようなスタンスでは上達できません。相撞きの際も、相手のプレイを少し離れたところから眺めることは大切です。自身がプレイするときについつい視野の狭くなる人でも、テーブル全体を俯瞰して見ることができます。テーブルの隅々まで目を配れば、意外なところに道が開けているのを発見できるものです。他人のプレイを自分がプレイしているつもりで観察する癖をつけるようにしましょう。

ポケットビリヤードの試合では、ナインボールやテンボールが主流のようですが、ほかのゲームを積極的に取り入れて練習することでバリエーション豊富なイメージを作り出す能力が身に付きます。ローテーションをプレイすることからは、ナインボールやテンボールより緻密な手球のコントロールを学習することができます。エイトボールからは相手との微妙な駆け引きを学べます。ストレートプールとも呼ばれる14-1ラックゲームでは、駆け引きだけでなく、ボールそのものの性質を学習しながら持久力までも鍛えることが可能です。どのゲームも特徴的で奥が深いものばかりです。時にはこれらをプレイすることでさらに視野を広げ、ビリヤードの魅力をあらためて実感してほしいと思います。

日頃、こんなことができないかな、あんなことができたらいいな、と考えているようなことは、たいてい先人が知恵を絞って体系化しています。中には目から鱗の裏技などもあります。重要なのは、殻にこもらず視野を広げ、積極的に上級者とのコミュニケーションをとることなのです。