この世のすべての競技に共通して必要なもの、それが「勘」です。スポーツ、格闘技、ゲーム、鬼ごっこ、かくれんぼに至るまで、すべてに当てはまります。日常生活においても勘に頼る場面が少なくありません。

ポケットビリヤードも、すべてのプレイにおいて勘に頼る競技です。そして、勘は磨きをかけることが可能です。

すなわち、上達するということは勘を磨き上げることであると言えます。

ボールひとつポケットに入れる作業も絶対ということはありません。人間がその手で行う以上、勘に頼らざるを得ないからです。しかし、勘の精度は鍛錬によって想像できないくらいに上げることができます。では、勘を構成する要素とはどのようなものでしょうか。それは超能力でもなんでもなく、唯一、経験を積むことだと言えます。人は経験に基いて予測し、対応する生き物です。そして経験を重ねるたびに考え、発想をふくらませ、アイデアを生み出すことにつながります。この流れが習慣となれば、対応力が増し、物事を優位に運ぶことができるようになります。それが熟練というものです。

ポケットビリヤードの練習においても、勘を養うことを意識するべきです。特に難しいことではありません。普段やっていることを、やらないようにするだけです。持っている知識を使わないようにするだけです。おわかりになるでしょうか。それでは、これがどういう意味なのか説明していきましょう。

的球をポケットに狙う際に、あなたがもし、構える前にテーブルのまわりを移動して、的球からポケットへの方向を確認しているようなら、それをやめてみましょう。わざわざ移動して確かめなくても、目の前の球に対してすっと構えるだけで、ポケットへの方向が把握できるように勘を鍛えるのです。慣れてくれば配置を見ただけで、入れるべきポケットの方向がイメージできるようになります。

ネクストポジションに手球を運ぶ際に、キューを定規の代わりに使ってクッションからの出方を測ったりしているのなら、それをやめてみましょう。テーブル上の球の配置を見ただけで手球のコースを予測し、実行できるように勘を磨くのです。

空クッションをする際にシステムを利用しているなら、それをやめてみましょう。ビリヤードテーブルはサイズも形もみんな一緒です。それほど広い空間ではありません。緻密にとはいきませんが、鍛えれば勘だけでもスリークッションくらいまではイメージできるようになるはずです。

いかがでしょうか。これらは、あくまで練習のときにだけ取り入れるべき内容です。実戦のときには、普段どおりのコース確認、システムなどを用いるわけです。それでも、日頃勘を鍛えておけば、普段どおりのこうした確認作業もさらに精度が上がるはずです。また、自分の持っている知識が及ばないような場面でも、鍛えた勘が力を発揮したためにピンチをしのいだというケースもあるのです。

このように、日頃から勘を鍛えているのだという意識を強く持ちましょう。人間の能力の高さは想像を絶します。自分に自信を持って練習に取り組めば、きっと早く上達できるはずです。