ビリヤードの上達を目指す人なら、自分のフォームについて悩むのが日常になるものです。足の位置や角度を変えてみたり、レストを置く位置を変えてみたり、頭を低くしたり高くしたり、利き腕の肩を上げたり下げたり、色々と試行錯誤を繰り返すことでしょう。結果、これが最もシュート力が高まると思い込み、傍から見ると実に不格好なフォームを選択してしまう、そんなことも多いのではないでしょうか。そのようなフォームは必ず身体のどこかしらに無理な姿勢を強いているものです。決して良いとは言えません。

では、

理想的なフォームとはどういう姿勢でしょうか。それを一言で表現するなら「自然体」であると言えます。

そしてこの自然体で構えた姿は見た目にも格好が良いものです。ビリヤードが好きなら、多くのプロや上級者のプレイを見たことがあるでしょう。それらを今一度よく観察してみましょう。その中から、ヘンテコなフォームをしている選手を見つけるほうが難しいことに気付くはずです。体型や身長による多少の違いや、頭の位置が高いか低いかの差くらいはあるでしょうが、無理な姿勢でプレイする人はなかなかいないと思います。

ビリヤード以外の競技でもそうですが、俗にいう「形から入る」というのは、あながち間違いではないのです。正しいフォームを身につけることは全ての基本であると言えます。ここから間違ってしまえば、上達の伸びしろを失うことにもなります。決しておろそかにしてはいけません。上達したければ、ここからリスタートを切りましょう。

まずは、いつもどおりに構えた自分の姿を鏡に映して見てみましょう。友人に四方八方から写真や動画を撮ってもらうといいかもしれません。その姿に違和感があれば、不自然な点がどこなのか細かくチェックします。頭の位置、顔や胴体の向き、利き腕の肘が極端に外側へ張り出していたり、逆に内側に入りすぎていたり、肘関節が開きすぎていたり閉じすぎていたり、レストと手球の距離など、客観的に見ることで初めて気付かされることが多いはずです。とにかく格好の良い無理のない自然体を基本フォームとして身に付けることです。初めのうちはかえって違和感を伴いますし、ストロークも安定せず、シュート力も落ちることでしょう。しかし、ここは我慢です。すぐに慣れて楽にプレイができるようになります。その先に順調な上達が約束されると思えば何でもないはずです。

さて、格好の良いフォームと言っても、理想とするフォームというのは人それぞれです。英国式スヌーカーのようにシュート力に重点を置いた低いフォームもあれば、手球のコントロールのため懐を広くし、ストロークに重点を置いた高めのフォームもあります。自分が目指すプレイスタイルにもよりますが、スヌーカーに比べてずっと小さなテーブルを使うビリヤードにおいては、シュート力にはさほど差が生じません。手球のコントロールに重点を置いた方が懸命とも言えます。だとすれば、懐を窮屈にしてしまう低いフォームより、ストロークにレパートリーを取り入れやすい高めのフォームの方が理想的かも知れません。少し高い位置から球の配置やコースを俯瞰して見ることで、手球の動きを把握することも容易になります。もっとも、最終的に判断するのは自分自身です。まずは無理のない自然体であると思えるフォームを追究しましょう。フォームはビリヤードを続けるうちに自分なりの形に変化し、様々な障害を生じることも多くあります。しかし最初に理想形を身に付けておくことで、チェックや修正が容易になるものです。